前書き
私は大平(おおひら) (@Victoria_Peak_) と申します。 7年勤めた野村総合研究所を辞め、2018/07〜2022/09まで 株式会社プレイド で勤務していました。 本連載は、私がSEやプロジェクトマネージャーを7年勤め、年収1000万のキャリアを積むも、自身の本当にやりたいことに気づき、30歳になって自分のキャリアを一度捨ててwebエンジニアとして転職します。その奮闘記を綴ったものになります。
お久しぶりです。
みなさまお久しぶりでございます。お元気でしょうか。 前回のエントリーを見返してみると、2020年5月11日ではございませんか。もう前回のエントリーから2年も経ってしまいました。 久しぶりに、今までの活動とこれからの動きについてつらつらと書いていきます。
過去の私の遍歴を見たい方は下記の過去記事を参照ください。
■ 過去記事一覧
■ 対象読者
- エンジニアに限らず前向きに人生のチャレンジをしようとしている方
- 人生のレーンチェンジを考えている方
- SIerからwebエンジニアになりたいが、実際はどのようになるのかを知りたい方
- 未経験でwebエンジニアに転職したが、業務に挫折しかけている方
- 30代以降でなにかにチャレンジしたい方
- システム開発現場でプロジェクト推進をなんとかしたい方
それでは本編に入っていきましょう。
事業と開発の間に立つハブとしての活動と原点回帰
少し前の話からお話しします。プロジェクトマネージャーからwebエンジニアへ転職して活動して2,3年後、考えてみると大変長い時間、ブログの執筆という活動から離れていました。私は引き続き株式会社プレイドにて、webエンジニアから職務を少し変えて、9月までプロダクトスペシャリスト(カスタマーエンジニア)として、テック的なポジションから顧客にプロダクトの価値をデリバリーすることに注力してまいりました。
前回の「プロダクトを愛するということ〜ぼくは自社開発に向いていない〜」を読み直してみると、「2−3年エンジニアをやってみたけど、なんやかんや考えてみたらエンジニア向いてなかったことがわかり、最終的に事業と開発の間に立つハブ的なキャリアを目指します。」と考えて、実際のキャリアもそのとおり動いてきました。
この記事では、プロダクトを使って顧客への最終的な提供価値を最大化するのには、汎用的なソリューション力で顧客のシステムにしっかりと組み込むべき、と言っています。私もKARTEを使って業界企業問わず色々な導入事例に触れてみたり、社内チャットを中心としたカスタマーサクセス改善に取り組みを進めました。また、youtubeに複数出演のご縁をいただいたことがきっかけで、個人の仕事も増えました。スポットでアドバイザーや、KARTE関係なく復数の中小企業の現場でフリーランスでマネジメントやコンサルティングを行う業務も行ってきました。
課題1:プロダクトを使用する事業側の課題
そんな活動をしている中で、事業側と開発の間に立つポジション特有のはがゆさを感じることが多くなりました。
例えばKARTEでは、プロダクト自体は素晴らしくやれることも多いですが、高機能で多機能故に少し仕様が難しく、事業側(=システムを使う側)が理解して使いこなすまでに教育コストがかかることが多くあります。
他にもある程度プロジェクトに技術要素(連携やプログラミング)がまざってくると、
- そもそもエンジニアがおらず、人員を揃えられない
- 導入以前で、技術や施策の仕様理解が難しく、事業担当から社内に説明が上手くいかず進捗しない
- プロダクトに組み込む時に、導入先企業の体制やリテラシーが足りないことが多く進まない
などが、プロジェクトがうまくいかない理由として出てきました。
課題2:開発現場における事業と開発の守備範囲の溝
また、フリーランスの開発現場も経験させていただき、そこで感じた課題感もあります。
- 事業側がシステムを「この通り作ればいい」という要件を出せない
- ベンダーの良し悪しの判断が難しい
- システム側が「この通りつくればいい」という要件が「システム側に伝わる」成果物を出せていない
- 事業側の要件がシステムで実現する時の整合性と矛盾している
- フリーランスエンジニアを雇うも関係値や進め方が難しくコントロールができないなど
こんな問題にも直面しています。
エンジニアはエンジニアリングが精一杯ですし、要件定義は事業とシステム開発の両方の経験がなければできる人はかなり少ないです。でも事業側はそういうのも、魔法の言葉「よしなに」でやってくれると思うことが多いのです。
個人的に事業側と開発の間に立つポジションをしばらく勤めていたので、この歯がゆさを常に抱える状況におりました。お互いが悪いわけではない、お互いが認識する守備範囲と必要なものの解像度が足りていないのだと。
疑問:本当に必要なのはエンジニアだけなのだろうか?
今世の中では、ITが中心の社会になっていて、起業活動においてもIT活用は必須になっています。労働者側も、給与が良かったり働き方が自由と言われているエンジニアの人気が高まっています。このエンジニアに 'なろう' 、エンジニアを '増やそう' ブームはだいぶ長く、いろいろな人や企業が、そのための活動を行ってきましたし、今も引き続き行っています。その中でエンジニアがある程度マス化し、全体のエンジニア流量は増えてきたと思いますが、現実問題エンジニアにチャレンジした全ての人が、キレイに優れたエンジニアになれるわけではありません。むしろエンジニアは人を選ぶ職業で、私のように向いてないとやってから分かる人もいます。私は実際にエンジニアになって体験したのでわかりました。
この記事の通りエンジニアとしての苦しみを続けたわけですが、30過ぎた数年間自分の人生を全力で費やして、エンジニアに向いていないことに気づけたことは財産になりました。
世の中ではエンジニアが足りない、優秀なエンジニアが足りない、といいますが本当にそうでしょうか?このセリフは大企業でもスタートアップでも中小企業でも同じようなことを言います。
しかもある程度エンジニアやプログラミングを継続できる人でも、事業側がいう「よしなに」を実現できるような、「要件定義もコミュニケーションも上手く、こちらがあまり細かく言わなくてもしっかり業務内容を察してくれて、ヒヤリングしてくれて、柔軟な仕様や拡張性の高いアーキテクチャをストレスなく作ってくれる優秀なエンジニア」になれるなんて人は本当に本当にごく稀です。ツチノコレベルです。仮に居たとしても少なくとも私達の周りには現れないでしょう。そんな人材は一般労働市場にでてきません。
考察:エンジニアを経験したことによって得た視点
自分もエンジニアになってみてエンジニア視点からプロジェクトを見るようになりました。そうすると、技術的に優秀なエンジニアからみても、「お客さんやビジネス視点で "世の中に出たら嬉しいこと” を決めること」の解像度と、「お客さんやビジネス視点で決めることをシステムで使いやすく変換する"作り"を考えること」の間で、情報が多大に欠落している事を感じるようになりました。
やっぱり、ぼくらにはコミュニケーション(作りたい事業やシステムを、お互いにしっかり考えしっかり伝えること)がそれぞれに足りないんです。
そこを適当にすると(本人たちは適当のつもりはないかもだが)、荒すぎる解像度やビジネス的な考慮をしっかり伝えないとざっくりとしたシステムしか出来ないし、「(暗黙の了解やロジックを外した)伝えたことだけ」もしくは「作る側が(違っているのに)ロジックを想像して判断したどちらか」を実装することになります。
考察:私はIT業界のために、どのように動くべきなのか。
優秀なエンジニアを育てたりするポジションは、プログラミングスクールやエンジニアを抱えるIT企業にまかせておいていいと思っています。 私の役割に立ち返ってみると、そこまでエンジニアリングがすごいわけじゃない、事業側のことはある程度わかるし、エンジニアがシステムを作るのに何があればその通りに作るのかはわかる。これはできる。でもKARTEを通してだけだと、付き合う会社も限られるし、今までの動きだと業界は変わらない。
どうすればよいのだろう。。。私は次の一手を考えに考えました。そして、自分の答えに行き着きます。
結論:そうだ、会社作ろう
プレイドを退職してRC株式会社を創業しました。
会社員として働き続けることへの違和感
先程述べたように、日々の業務の中で常に次の一手を考えていました。確かに、会社員としては、苦労もありましたが環境に恵まれていましたし、キャリアも自分の意図した方向にすすめることができていました。ただ、どこかイチ社員という小さな動きしかできていないことに歯がゆさを感じていました。
今までの環境にも大きな不満はありませんでした。お世話になっていたプレイドは、SaaSスタートアップとしてかなり急成長を進めてきました。日々、プレイド社内のメンバーがめちゃくちゃ頑張っているのを間近で見ていますし、優秀な人の集まりなので各々が主体的に稼働し、余計な縛りルールがなく、自分の裁量で他社よりも自由に業務を行える環境でした。その甲斐もあり一昨年の12月17日にはマザーズ(現在のグロース市場)に上場も果たしています。その後にはイケイケのスタートアップ、と一部巷で呼ばれることもありましたし、かなり貴重な経験をさせていただきました。
より大きな規模で勝負したい。
でもちょっと会社員として自分が動くには、スタートアップといえども自由度が足りない。自分のやりたいように自分の意義を強くもって事業をやりたいのです。 逆に億のプロジェクトにアサインされていたNRI時代のほうが人数も金額もダイナミックさがあります。じゃあ大企業に戻るのか?いやいやただガチガチのルールの中での稼働になるため、あくまで一人としての価値からは変わらず、大企業にいくのは少し違う。と思いを馳せます。
どうにかしてもう少し大きい規模で価値をだせないのか。もう少し顧客に自由にクリティカルにアプローチできないのか。ということは、より経営に近づくしかないのではないか。と思うようになったのです。会社員の場合は、企業のプラットフォームなど基盤を使うことはできるものの、会社方針から外れてしまうことはできないし、予算もありますので、行動範囲が限られてしまうことが多いです。自分が企業として振る舞えるようになれば、予算も自分で組めるし、起業提携や契約も自由に組める。規模感もどんどん大きくできる。自由さとスケールの大きさがコントロールできると閃いたんです。そこで創業を決めました。
前回の転職時を思い返してみると、恵まれた環境を辞めるという感覚は、NRIを退職する時と同じです。NRIは大企業で30歳で年収1000万、優秀な同僚や適切な労働環境や知名度もあり、普通に働いて入る分には申し分ない会社でした。結局私は自分のポリシーに沿って生き、どんなに恵まれた環境でも、辞める時は辞める。手放す時は手放す。自分の成長に集中することはもう終わり、世のために仕事をする。そういう人生に来たと悟りました。
創業後の活動
弊社「RC株式会社」について
私は今までITでの会社員でのキャリアを10余年ほど積んでまいりました。その中で大規模開発からスタートアップのスピード感のある開発、中小企業の開発現場まで多岐に渡って経験してきました。先程述べた通り、企業や関係値の垣根なくIT業界を盛り上げていきたいと思っています。
IT通訳をコアコンセプトとして活動
私(=弊社のサービスとして)は「IT通訳」をコアとして活動していきます。IT通訳の得意分野は、わかりにくいITを、関係者にわかりやすく会話すること。そしてシステム開発現場のコミュニケーションロスを滑らかにしていくことです。当初はITコンサルタント、プロジェマネージャーと名乗る予定だったのですが、ITコンサルタントは提案・プロジェクトマネージャーは推進メインのイメージが強いです。そうではなく、同じ日本語なのに話が通じにくいシステム開発で、常に通訳しながら必要なロールに時間単位で切り替えることで価値をだしていきます。そして、自分で入りたい案件と困っている現場に自身の経験やノウハウを提供していきます。最終的には、先程述べた「事業側のリテラシーを強化、エンジニアや開発ベンダーとの通訳に注力することでコミュニケーションロスをなくし、IT業界を変えること」を達成していきます。
また、システム開発に関わる際の活動の考え方のベースの参考に、以前に豊田青年商工会議所様で講演させていただきました内容がありますので、ご参考にみていただければと思います。
開発はアライアンスで提供
もう一つはアライアンスでのシステム開発活動です。弊社はまだ私一人ですので、開発案件が発生した時に開発力がたりません。なのでアライアンスという形で、その案件に必要なリソース量・種類・お互いの文化の相性まで考えて提供いたします。すでに10社ほど様々なアライアンスを組ませていただいておりますので、もし何かあればDMなりでお声かけいただけますと幸いです。 twitter.com
- Emai: contact@rc-ltd-alliance.com
この2つの事業を中心に企業活動を通して、各企業のシステムプロジェクトがコミュニケーションによって推進され、事業が上手くいくことで発展し、IT業界全体が成長していくことを祈って活動して参ります。見守って頂けるとありがたいです。
さいごに:本記事で連載は完結となります。
ここまでお読みいただきありがとうございました。「SIer年収1000万を手放して、web業界で本当にやりたかったこと」連載は今回で最後となります。自分自身プロジェクトマネージャーからエンジニアに転身するというチャレンジを含んだ中で模索する失敗や経験、その中での小さな成功を書いていく連載でしたが、今回で完結としたいと思います。最後は創業という形で締めくくるとは夢にもおもっておりませんでした。この後の記事は未定なので、また気が向いたらまた別の連載になるのか、単発の記事になるのかはわかりませんが、近況や考えていることなどを書こうと思います。初期の記事からお読みいただいた方、本当にありがとうございました。
また、直近別記事としてこの内容をインタビューいただいたものが記事となっております。 ご興味がありましたらこちらも是非お読みになってください。 note.com
またtwitterでもご連絡受け付けておりますので、質問・相談・依頼案件ございましたらご連絡いただけますとありがたいです。重ねてお読みいただきありがとうございました。